2019/10/29【新ミニマリズム】思いの解像度を高める“ゆるふわミニマリスト”論

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拓馬北河

拓馬北河早稲田大学文学部4年

早稲田大学文学部4年生。文学、音楽、映画、ファッションなど多くのカルチャーに興味を持っている。卒業論文より記事の執筆に夢中のようだ。卒業後はファッション産業へ身を投じることを決心している。

あなたはすぐにミニマリストになれるか

今から10年前、「断捨離」という言葉がにわかに注目を集め、翌年2010年の流行語大賞にノミネートされるまでに至った。最近では、某巨大動画コンテンツにより近藤麻理恵さんがひと思いにもの捨てをする様子が「こんまりする」という動詞が生まれるほどのバズを起こし、さらには生活に必要な最低限の物以外の一切を持たない「ミニマリスト」と呼ばれる人がメディアを中心に注目を集めた。

この中でもミニマリストという概念。これに期待と高揚を感じる人は少なくないと思うけど、いきなりあそこまでの「割り切り」をするのは少し壁が高いんじゃないだろうか。実際この序文を書く私も、服を買うことをやめて白Tだけを着る生活を半年続けてみたが、それ以上の割り切りは不可能だった。

だから、物欲や興味の幅が大きい早大生に「ミニマリストのススメ」なんてお堅い論調はやめて、新しい価値観「ゆるふわミニマリスト」なんてどう?って話をしてみようと思う。(それはもう“ミニマリスト”ではないのかもしれないが...)

今回、現在ゆるふわミニマリスト計画を絶賛実施中の文学部4年北河拓馬の日記をお借りした。すると、無理のない「捨て」で大切なリターンを得る新しい効用が見えてきたので以下に記す。

収集小僧の私が「ミニマリスト」になる話

お久しぶりです。北河です。
突然ですが、今私はあることを試みている。
それは「ミニマリスト」になることだ。
9月下旬、偶然本屋で手に取った佐々木典士氏の「ぼくたちに、もうモノは必要ない」を読んだことがきっかけとなった。

そもそも私は「ミニマリスト」とは対極にいるような存在だ。大量の洋服、本、雑誌、集め始めたレコード、靴箱から溢れ出したスニーカーたち……。
なんでもかんでも収集してしまう癖が私にはあり、尚且つ捨てることができないタチだ。

モノが多すぎて何が自分にとって大事なのかが分からない状態になっていた。
そんな中、私は区別されることなく、また認識されることもなく部屋に散乱したものたちから、三つの特性分けを見出した。

「必要なもの」「物欲を満たした過去のもの」「無駄で要らないもの」である。

「必要なもの」とは生活必需品だ。冷蔵庫とかがそう。これがないと生活の質が下がるだろうなというもの。
「物欲を満たしたもの」とは残存価値のある嗜好品。使用したらなくなるタバコやスイーツではなくて、残り続けるものだ。私の場合は服がもっとも大きな割合を占める。
「無駄でいらないもの」とは、生活品としても嗜好品としてもいらないもの。


大学生活も残すところあと約半年。ものの特質が見分けられ一時的に楽しくなった。今一度こんな形で自分の生活、そしてモノとの付き合い方を見直したい。別に失敗したって少しの我慢だ。
そんな経緯で「ミニマリスト」になることを志した。

「ミニマリスト」の定義や、方法論は佐々木氏の本を読んでいただきたい。
なので、自分が実際に断捨離を進めていて感じたことをここではのべる。

私は大学から直ぐ近くのマンションに住んでいる。
部屋はワンルームで7畳ほどだ。
収納が一切ないことは大きな欠点だったが、「ミニマリスト」になる上ではむしろ好都合である。
「ミニマリスト」になろうと決めてからの動き出しは早かった。
まずはテレビ、プリンター、炊飯器などの家電類、そして本と雑誌合わせて150冊ほど処分した。
普段から民放をほとんど見ていなかったため、テレビがなくてもパソコンがあれば大丈夫だ。ラグビーが見れないことに気づき少しうろたえたが、わせディアのドンである手塚氏の家にお邪魔することで解決できた。
プリンターはセブンのネットプリントを使えば必要ない。炊飯器もほとんど稼働していなかったので断捨離。
昔からそこそこ本が好きだったため、集めた本を手放すのには悩んだ。が、キンドルを持っていることを思い出した。もし読みたくなったら電子版を買えばいいのだ。

そのほかにも積極的に棚やボックスなどのハードを捨てることによって断捨離を推し進めてきた。
今では、家の中で何がどこに置いてあるのかが全て把握できている。
モノが少ないから散らかることもないし、なくなることもない。

だがしかし、
「ミニマリスト」になると言いながら未だほぼ手付かずのモノがある。
それは洋服と靴だ。
一年生の頃から必死にバイトして集めきた洋服をするのは抵抗しかない。
実家に大きなダンボール二つ分の洋服を送ったものの、ハンガーラック二つ分とパンパンに押し込まれた5段の衣装ケース、そしてそれらに入りきらず部屋のいたるところにかけられた洋服がまだ残っている。
どうしよっかなぁ。
んー、だれか預かってくんない?



というわけで、まだまだ道半ばである。
まだまだ日が浅いため、そこまでの精神的変化は実感していないが、以前よりもスッキリとした気持ちになっているのは確かだ。何より、ものを捨てる過程で残すものの大切さに気づいた。
とは言え、モノがなくなったことによる寂しさなのか重めの風邪をひいてしまった。
勢いあまって残っていた風邪薬を捨ててしまったので、買い直しだ。



              北河拓馬

以上が日記の全文なわけだが、一読するとわかる通り当の本人は一般的な「ミニマリスト」を目指し奮闘している。むしろ、編集者に「ゆるふわ」なんてダサい接頭語をつけられて憤慨しているくらいだ。しかし、彼が「ミニマリスト」目指して行動を開始する前に行った3つ分類化と無意識に規定した二つの物質特性の認知によって、無理のないユルいミニマリスト計画に成功したんだと思う。改めて見てみる。

所有物とあなたとの関係性には二種類の特質がある

ものを「捨てる」ということは自分とものとの間の「関係性」を見直すということに他ならない。そこでものに価値を見出す時、その特質は大きくは二つに分けられる。
機能的価値と情緒的価値である。これは昨今のブランド研究をはじめとするマーケティング論でも盛んに叫ばれている概念。機能的価値とは、そのものが直接的に実生活に与える価値のことを言う。冷蔵庫は、ものを冷やし保存できるという機能的価値があると行ったようにだ。情緒的価値とは、情動に訴えかける価値のこと。そのものを持つことで覚える誇りや、そのものを利用することで感じるワクワクした感情などが羨望の的となる。一般的に消費してなくなるものよりも、所有し続けるものに感じることが多いが近年の研究ではその限りではないことが広く注目されている。

この二つの価値をもとに、先ほど北河が分類した三種類を考えてみる

①「必要なもの」→機能的価値が少しでも存在しているもの

北河は文中で生活必需品と記述している。一般的なミニマリストは、この分類上で所有コストと消費コストを天秤にかけて精査をし厳しく捨てていく。が、ゆるふわミニマリストはこちらで心理的な負担をかけない。実際、北河も実生活に寄与していると感じたものは捨てずにとっておいてある。

②「無駄でいらないもの」→機能的価値・情緒的価値どちらも失われている。

機能的な価値が消失したり薄れていたりするもの、さらにそのものにワクワクとした感情も持てなくなっていればこちらに入る。わかりやすくいらないものであるため詳しい説明は省略する。

③「物欲を満たした過去の遺産」→機能的価値はないが情緒的価値が高い

ゆるふわミニマリストを目指す過程においてここだけはしっかりと向き合いたいという見極めの部分が、この分類上の物質たちである。
物欲を満たす時(特に大きな買い物をする時)、無意識のうちに人は大切な価値判断基準を持ってものを購入するらしい。その時感じた情緒的な価値基準は時間とともに失われたり忘れられたりするから、ものを捨てる過程でこの大切な基準をもう一度考えてみることが肝要だ。
北川の場合、このほとんどが服であるといった。彼の場合、服を機能的な価値で買うよりはブランドが築き上げてきた文化やデザイナーの価値観に共感して買っていることが多い。それぞれのブランドが持つ価値観をもって服を選別することで、「思いの解像度」は圧倒的に高まるだろう。もし仮に全ての服を所有することになっても構わない。その時は、「作り手の価値観が紐付いた物質が好きなんだ」という、もう少し抽象化したな自己理解が得られるんじゃないか。

無理のない「捨て」で得る大切なリターン

ゆるふわミニマリスト計画は、機能的なものはあまり深く判断せず、情緒的価値のあるものにだけ判断基準を集中させるものだ。これは一気に大量なものを捨てることにはならないから、体力的にも心理的にも負担が少ないのではないだろうか。
ものに情緒的価値を見出してあげる、そして今の自分にその価値観が残っているかを判断してあげる過程でおのずと自分に向き合うことになる。楽しみながら。
その先の効用についても実体験を元に言いたいことは山ほどあるのだけれど、押し付けがましいからこの辺りにしておこう。ありがとうございました。

SOURCE

・グラムコ株式会社「ブランディング用語集」
https://www.gramco.co.jp/question/282.html
・延岡健太郎「価値づくりの経営:意味的価値の想像とマネジメント」
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16278/1/070iirWP08_05.pdf

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